COLUMN コラム

過去採択者が振り返るTOKYO Re:STARTER

はじめに

「TOKYO Re:STARTER(以下、本事業)」は、一度困難に直面しても何度でも立ち上がるタフな起業家「リスターター」の再スタートを支援すると共に、彼らが再起を遂げる姿をモデルケースとして世の中に発信します。

これにより、再起を目指す起業家や潜在的な起業家層に加え、投資家・事業会社・金融機関などの起業家を取り巻くステークホルダーが抱く、「失敗」や「再挑戦」に対するイメージを変え、失敗を恐れず「何度でも挑戦できる TOKYO」を目指しています。

第一回、第二回のコラムでは、主に本事業の事業背景や事業概要、具体的な支援内容を紹介しました。今回は、本事業に参加した過去採択者へのインタビューを通して、参加前後の変化について伺った内容をご紹介します。

インタビュー協力者

工藤 正義氏(2021 年度参加者)

Ge-O-Ado 株式会社代表取締役。「『届ける』に関わる全ての人をハッピーにする」をミッションに、ポスティング会社のコンサルティング支援やポスティング代行を行っている。本事業では、配達員とチラシを届けたい企業のマッチングサービスの立ち上げに取り組んだ。

菊地 範芳氏(2020年度参加者)

OYC株式会社代表取締役。印刷業とシステムサービス業を手掛けており、本事業では、デザイナーのデザインを有効活用し、誰もが希望するデザインを作成できる新たなプラットフォームの立ち上げに取り組んだ。

プログラムへの参加のきっかけ

本事業参加者の参加のきっかけは様々です。一億円近い負債を抱えつつ2016年に倒産を経験し、5年間の会社員生活を経て参加した工藤氏は、本事業参加当初を以下のように振り返っています。

「本事業へ申し込んだ当時の私は、再起業するかこのまま会社員を続けるのかの岐路に立っていました。起業に関するセミナーに参加しつつ、会社員として働きながら事業アイデアを検討していましたが、なかなか事業立ち上げに向けた具体的な行動には移せずにいました。」

プログラム参加当時を振り返る工藤氏

菊地氏は代表を務める会社の主事業である名刺の制作/販売の売上がコロナで大幅に減少。当時を振り返りつつ、参加のきっかけを以下のように話しています。

「売上が低迷する中で、情報収集の観点で最初はプラットフォームイベントに参加しました。そして、参加した中で、低迷していた売上の回復につながる新規事業を立ち上げたい、またメンターや他の参加者との交流を通じて起業家として足りないものは何かを知りたいと強く思い、継続的に参加するようになりました。」

プログラム参加のきっかけを振り返る菊地氏

プログラムを通じての変化

アクセラレーションプログラム受講生は、新規事業立ち上げに向けて、メンターからの事業案のブラッシュアップを受ける「メンタリング」、資金調達・売上創出に向けて、ベンチャーキャピタル(以下、VC)・エンジェル投資家や事業会社等と参加者を引き合わせる「マッチングサポート」に参加します。

菊地氏は、メンタリングを通じて、ミッションの策定からデザイナーへのヒアリング項目の精査などを一貫して行いました。そして、デザイナーへのヒアリングを繰り返し行い、事業アイデアをブラッシュアップしていきました。再起業を目指し参加した工藤氏は、本事業に参加することで自身の中に変化が生まれたと振り返っています。

「最初(本事業参加前)に起業した際は、ビジョンや強い想いを持って起業したわけではなかったため、自身の思いと業績の間に生まれた溝が日に日に増し、経営者として迷いが生まれてしまいました。本事業を通じて「誰のどういう状態をどうしたいか(=ミッション)」から考え、事業を創ることの重要性を学び、身体に染み付けることができました。これによって今では、ぶれないを持ち事業が軌道に乗っていない時でも目指すものを失わずに事業を進めることや、ピボットすることができると考えています。」

重ねて、確固たるミッションを作ることが新規事業の立案に与えた良い影響について、以下のように述べています。

「メンタリングを通じて、ミッションをまず策定することができました。そして、ミッションを実現するためのソリューション案をメンターが整理しながら引き出してくれました。これによって、アイデアありきの思考だと考えられないソリューション案をつくることができました。」

本事業の参加者は、事業で得た学びを活かして、「未来」を見据えた一歩を踏み出しています。工藤氏は本事業参加後からこれまでの道程を振り返りつつ、これからの展望について、以下のように述べています。

「本事業への参加をきっかけに再起業することができました。現在は、配達員とチラシを届けたい企業のマッチングサービスの開発本格化に向けた前段階として、以前から取引があった企業のポスティング代行に注力しています。マッチングサービスを開発しても、サービスを使いうる想定顧客との信頼関係がなければ、使っていただけないと考えています。そこで、今は倒産した企業時代の取引先との信頼関係の再構築に向けて動いています。そして、これからは(本事業で立上げに向け動いた) マッチングサービスの開発にこれまで以上に注力して、ポスティングを行う労働者にスポットを当て彼らが正当な対価を得られるビジネスで、成功例を作りたいです。将来的には、M&Aや上場が目指せるところまでやっていきたいです。」

また、菊地氏は以下のように述べています。

「私は本事業を通じて、Tシャツやフライヤーなどのグッズ作成を検討されている方が、デザイナーが登録したスケッチデータを活用しつつグッズデザインを簡単に行えるサービスを新規事業として立ち上げることができました。そして、現在はサービスの改善を目指した実証実験を行う中で想定外の反応が返ってきたので、ピボットも視野に入れつつ引き続きサービス改善を行っています。これからは OYC株式会社をより成長させていきたいです。本事業でメンターやVCの方からいただいたコメントを活かしつつ、新規事業が成功できるよう加速していきたいです。」

再起を目指す方にエールを送る二人

終わりに

本事業を通じて再起に向けた一歩を踏み出した二人は、これから再起を目指す人たちに対して、以下のように力強いエールを送っています。

「起業回数に関係なく、とにかくトライアンドエラーの意識を持つことが大事だと思います。失敗を恐れずに一歩踏み出してみなければ、どんな結果も生まれません。小さな挑戦を積み重ねることが大事だと思います。(工藤氏)」

「何回目の挑戦であっても問題ありません。何度でも挑戦しましょう。(菊地氏)」

本事業の参加者は、再起業や資金調達、企業との事業提携など、それぞれの形で再スタートを切り、羽ばたいていきます。TOKYO Re:STARTER は、困難な状況を乗り越え飛躍する起業家を一人でも多く輩出することで、世の中全体の再挑戦への機運を高めていきます。