COLUMN コラム

2022年度採択者が語る Tokyo Re:STARTER

はじめに

「TOKYO Re:STARTER(以下、本事業)」は、一度困難に直面しても何度でも立ち上がるタフな起業家「リスターター」の再スタートを支援すると共に、彼らが再起を遂げる姿をモデルケースとして世の中に発信します。

これにより、再起を目指す起業家や潜在的な起業家層に加え、投資家・事業会社・金融機関などの起業家を取り巻くステークホルダーが抱く、「失敗」や「再挑戦」に対するイメージを変え、失敗を恐れず「何度でも挑戦できる TOKYO」を目指しています。

第一回のコラムでは、主に本事業の事業背景・概要を紹介しました。今回は、本事業の具体的な支援内容を、本年度採択者のコメントを交えて紹介します。

本事業の流れ

通年で開催する「プラットフォーム」と、審査会を経た後に実施する「アクセラレーションプログラム」で構成されています。

プラットフォームは、再起を目指す起業家やその支援に少しでも興味・関心がある方など、どなたでも参加できるプログラムである一方、アクセラレーションプログラムは、審査会で採択された 20 名程度が参加できるプログラムです。

倒産・破産から再起を目指す方や、事業がクローズし、新規事業での再起を目指す方など、様々な方がプログラムに参加されます。

プラットフォーム

プラットフォームでは、自身の事業の不本意な結果と向き合い、タフな起業家として再挑戦するためのマインドセットを養います。第一線で活躍する先輩起業家に、過去直面した困難(倒産・破産や事業のクローズ等)と乗り越えた経験をお話しいただく講演会や、再挑戦に向け参加者同士で自身の経験からの気づきや、学びをディスカッションするワークショップを実施します。

講演会を視聴した参加者は、実際に再起を遂げた方の話を聞き「私のつらい気持ちは登壇者に比べたらまだまだだと思いました。自分より過酷な思いをしても再起を遂げ活躍している人を見た時、『自分のマインド次第でどうにでもなる』と感じました。」とコメントしています。

ワークショップでは、事業の軸となる「ミッション」の考え方や過去・現在の困難に対する向き合い方などをテーマにディスカッションし、自分自身を見つめ直し再挑戦に向けた準備を行います。ワークショップの参加者は、「困難に直面しているのは自分一人ではなく、同じように苦しみながら挑戦する人の存在に刺激を受けました。」とコメントしています。

プラットフォーム期間で学んだことを参加者に伺うと、参加者は以下のように口々に自分自身との向き合い方を強調しています。

「(一番印象に残ったことは、)『現状を作るのは自分次第』だと知ったことです。世の中には、同じ状況でも成功する人とそうでない人がいます。成功する人との差は、突き詰めたら『自分自身の選択』なのだと実感しました。」

「自分と向き合うことが重要でした。自分自身のことは自分が一番理解しているつもりでしたが、自己理解を深めることに終わりはないと感じました。」

アクセラレーションプログラム

新規事業立ち上げに向けて、参加者の事業案をメンターがブラッシュアップする「メンタリング」、資金調達・売上創出に向けて、VC・投資家や事業会社等と参加者を引き合わせる「マッチングサポート」などをおこない、再挑戦に向けた活動を約半年間にわたって伴走します。

メンタリングでは、新規事業立ち上げの共通プロセス(ミッションを描くことから始まり、ミッションを軸としたビジネスモデル・事業計画を策定)に沿って、参加者の新規事業案をメンターがブラッシュアップします。

グループ形式で行われ、リラックスした雰囲気の中で自身の想いをメンターにぶつけながら、グループメンバーの話を聞くことで、刺激を受けることができます。

参加者は、「ミッションに立ち返ることの重要性、自分の事業について様々な人から意見をもらうことの重要性に気づきました。」「自分一人では気づけなかった部分をメンターが気づかせてくれて、気持ちが段々と変化しました。事業への熱量が足りていなかったこと、人の目を気にしていたこと、プライドが高かったことに気づくことができました。自ら内省する習慣がついたのは、このプログラムのおかげだと思います。」とコメントしています。

マッチングサポートでは、VC・投資家や事業会社等に5分間でピッチし、資金調達の機会と同時に、それぞれの立場の視点からの忌憚ないフィードバックが得られます。

参加者からは、「メンターの皆様は、他の業界の方にも関わらず、私の状況を察して具体的なアドバイスをくださる方ばかりでした。」「実際に事業会社で働く方とお話しすることで、検討中のサービスを事業会社へ導入するにあたり想定されるハードルの解像度が上がり、整理することができました。」とコメントしています。

また必要に応じて、参加者へ個別フォローを行います。

新規事業に必要な資金調達の準備やユーザーヒアリング、実証実験の協力企業とのマッチング等をサポートします。

参加者は、「大手医薬品卸売会社の事業投資部の方など、普段では巡りあえない方々との面談機会をいただきました。事業が粗削りの段階でそのような方と面談できたのは大変ありがたく、事業を前進させることができました。スピード感を持って数多くの人と会い、耳を傾けることで事業として進むべき道が開けると学びました。」とコメントしています。

成果報告会

アクセラレーションプログラム参加者が約半年間の成果を発表する機会です。

一般公開で開催し、本事業の取組みを広く発信することで、投資家・事業会社・金融機関・メディア等起業家を取り巻くステークホルダーを中心に、社会に向けた再挑戦の機運醸成を図ります。

併せて、例年はどん底から再スタートを遂げた先輩起業家の講演を実施しています。

終わりに

再挑戦に向けた道のりは、起業家によって様々です。

起業家たちはときに様々な感情が絡みあい、不安で動けなくなることがあります。それでも、スピード感を持って再スタートを切れるよう、本プログラムではそれぞれの起業家に合わせた必要な支援を提供します。

参加者の多くが、プログラムが進行するにつれて起きた自身の変化が、事業活動によい影響を与えていると語っています。

参加者の一人は、「この事業は、起業家の人生を変えるために本気で踏み込むプログラムだと思っています。方法論の話だけでなく、自分が何を実現したいかを時間をかけて引き出してくれます。夜遅くまで採択者を気にかけ向き合ってくれる姿を見ると、こちらも本気で成果を出したいと身が引き締まります。とにかく自分で決めたことをやり切ろうと思いました。もしこの先で行き詰まったとしても、『全て自分次第』という気持ちで乗り越えたいと思います。」とコメントしています。

また、他の参加者は「これは『起業家自身を変えるプログラム』だと感じています。プログラムでは、成果を与えられるのではなく、成果の出し方そのものを教わっています。一つずつ話すとキリがないほど勉強になりましたし、自分にはまだまだ伸び代があると感じています。プログラムが終わった後も、ここで学んだことや、成長している感覚を忘れず進み続けたいです。」とコメントしています。

起業家として生きていく道のりには様々な困難があります。本事業は一般的なアクセラレーションプログラムとは異なり、事業の将来性・成長性を高めるための支援だけでなく、参加者一人一人と向き合い、本プログラム以降で困難に直面しても何度でも挑戦し乗り越えられる状態をつくることを重要視しています。

次回のコラムでは、「過去採択者が語る、プログラムを通した成長」というテーマで、プログラム参加前後に起きた変化を、昨年度・一昨年度の採択者のインタビューを交えてご紹介いたします。